2014年02月23日

感想『日下部くんanother』


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『日下部くんanother』(著者:神堂あらし
雑誌 まんがタイムジャンボ にて連載

■作品の経緯

今回この『日下部くんanother』という作品を取り上げたいと思います。
作品を巡る経緯を先に書いておきますと『日下部くんanother』は芳文社の雑誌まんがタイムジャンボにて2012年9月号から2013年6月号まで掲載された作品です。詳細は後述しますがこの作品入れ替わり好きからの評判はとても良く、自分もTwitter上ではありましたが各話ごとに感想を上げるほど入れ込んでました。

しかしこの作品第10話で打ち切りに。作者の神堂あらし氏も打ち切りということを ブログ上で明かしています。まんがタイムジャンボ誌での評判はどうだったのかというのは窺いしることは出来ませんが、雑誌掲載作品全体で見た時、自分の入れ替わりスキーの見方を差し引いても面白いほうだと思っていただけにもう残念としか言いようがありません。
(アンケートも書いたのになあ・・・)

さらにこの作品を物語で見た時、終わりらしい終わりも描かれていません。しかも第10話(最終話)掲載の次の号から神堂あらし氏の別の作品が始まっているという状況。
神堂あらし氏はブログで「おしのびっつ同様のコースを辿る事になるのでしょう」と言ってました。 (『おしのびっつ』は神堂あらし氏の過去の作品)つまりどういうことかというと「この作品を収録した単行本は出ないけど個人で同人誌という形で出します」ということです。基本的に漫画作品はよほど熱心な人でもない限りは単行本を基準に楽しまれるものだけに、一般商業ラインでは単行本未収録のままなのは本当に残念としか言いようがありません。

その後2014年2/2のコミティア107にて『日下部くんanother』の同人誌が発売になりました。雑誌掲載分10話に加えて描き下ろしの24P(+3話分)の内容で、物語が一応の区切りがつくところまで描かれています。 これはこれで作品が形になるにはなるので嬉しいのですが、やはり理想としては正式に単行本を出してほしいという思いがあります。現状誰でも読める形としては神堂あらし氏がPixivに上げてくれた第1・2話のみということになります。

コミティア107新刊サンプル by 神堂あらし/しんどうさん on pixiv



■感想

あらすじは
日下部由紀は会社の営業として働いていたがその目つきの悪さもあってあまりいい成績を残せていなかった。そんなある日、大人しい印象だったOLの星野かずさと階段を転げ落ちそのショックで入れ替わってしまう。その事に動揺する日下部だったが星野は天然な性格ですっかりペースを持っていかれてしまう。お互いの立場で過ごすうちに相手のことがわかって距離が縮まっていくのだが。
というもの。

基本となる部分はいわゆるオフィスラブコメです。
意外と成人の社会人の男女が入れ替わる作品って数が少ないこともありそういう意味でも貴重な存在なのかなと思います。神童あらし氏の絵柄はキャラのラインがはっきりしていて見やすくて、何よりも凄いと思ったのは全体を通して入れ替わりならではのギャグが多いんです。例えばこういうの。

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事情を知らなければ青葉がふざけんな!という感じになるのもよくわかるw また男女が入れ替わってるからならではの面白さというのも多分に使われてまして本当に感嘆した次第です。入れ替わった状況って面白いものだよね、というのを作者様もわかっていて楽しみながら描いてる感が伝わってきていいのですよね。

入れ替わった状況というのはもし実際に起きたらというのを想像すると悲劇でしかないと思うんですけど、だから創作で扱う場合はいかに面白いものに昇華させるかというのが作者の腕の見せどころだと思うんですね。で、そういう意味で感心したのが主人公の二人のキャラクター造形です。男主人公の日下部は不器用で生真面目、女主人公の星野は天然だけど一途なところも持っている。よく入れ替わりものだと女性側の方が思ってしまう損が多いのではないかと思えてしまう部分があったりするのですけど、この二人だとこうなるわけです。

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この画像だけ抜き出しちゃうとシリアスに見えちゃうかもしれないけどちゃんとここもギャグでしてw 入れ替わる原因を作った(どちらかと言えば事故に近いけど)のは日下部ということもあるけど、入れ替わった状況というのは生真面目な日下部にしてみれば星野の体を奪って自分の体を星野に押し付けたくらいの感覚があるわけです。だから日下部くんは星野を思いやってるんだけどそれに対して星野はあんまり深く考えていないという変な噛み合い方をしてる。この入れ替わったという状況を深刻なものに描いてないし読んでる側としてもうまく笑いに転化されていて非常に楽しめるものになってます。何が言いたいか自分でもよくわからなくなってきたけど要するに二人のキャラがすごく好みだってことですw

この後も二人は入れ替わった相手を露骨に演じてキャラクターを変えるということはしてないんですけど、でもそれがいい変化を及ぼしていてその状態のまま周りに受け入れられていくという流れになってます。

ここから同人誌による追加分の話なので反転します。

元々星野さんは日下部くんに気があって第13話では展開の流れで告白に至るわけなんですけど、その時の言葉が「(ウェディングドレスを)私の代わりに着てください」というもの。これは凄い台詞であるなと。だってこれ入れ替わったままの状態で構わないので結婚してくださいということですよ。これはもうニヤニヤが止まりませんよ!

反転ここまで

■入れ替わりものの理想として

長年入れ替わり作品を見続けてきて自分の中で一つの理想形みたいなのがあります。それは「入れ替わったままの状態とラブコメは両立できるのではないか」というもの。

今までの作品で入れ替わりの事象がどういう位置付けにあったかというと「アクシデント」「事件」「事故」というものです。またうまく物語として収まりがいいようにしていった場合は「今まで気付かなかったけど相手の立場になってみてわかった」みたいな相互理解のためのきっかけのような位置づけで扱われます。つまり一般的にはこの状態は「通常ではない」「早く解消すべき」状態なんです。

ただ入れ替わりを扱った作品が好きなものの立場から言わせてもらうと入れ替わった状態って最高に面白いじゃん?というのがあるのです。だから作品の入れ替わった二人が(「仕方がないから」といった消極的ではなく)この状態を受け入れて前に進んでいくように描いてくれたらそれは素晴らしいよねということなわけですよ。この『日下部くんanother』はその理想にかなり近い位置にある作品だと思っているのです。

■終わりに

上記の作品の経緯にも書きましたが作品を鑑賞するのにあまり恵まれているとは言えず、昨今の流れの電子書籍にも対応はしていません。作者様は自身でもすごく好きな作品と言われていますので、理想は連載再開ですけどそこまでは言わないにしても単行本はなんとか出てくれませんでしょうかまんがタイムジャンボ編集部様m(_ _)m。
posted by クロエ at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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